私は。

“真也、蜜love説”を、延々と聞いていた。


否定しても否定しても、でも、だって、と色々なこじつけを繰り出す彼女に。

確かに、これはキツいかも知れない、とは思った。



思った、けれど。


徐々に再激昂しだした彼女が、伝言という名の捨て台詞を叫んで泣きながら飛び出すまで。


私、ものすごく堪えたと…思う。




ひとりになった、部屋。

ずっと静かだった、哲の部屋を睨みつけて私は。
シーツごと、ドアを思い切り開けた。




「ちょっと真ちゃん!!!」


案の定、哲のベッドの端に腰掛けて苦笑いを浮かべた真ちゃんは。


よぅ、とばかりに、片手を上げた。




ちょっとここ座んなよ!

ほら正座!
早く!



「………真ちゃん…最っ低!」


携帯の私の名前!
honeyって入ってるんだって!?



「あ~……」

「あ~じゃないよ!そんなことするから誤解されるんじゃん!」


「…でもほら、“蜜”だから」

「でも“蜜”だから!?」


誰が洒落だけで、そんな登録名にすると思うんだ!

よくもそんな馬鹿なこと……!




「…honey、っていうか…」

「なに!?」


「…“貧乳's honey”?」

「……………ッ…!!!」



哲が、黙って真ちゃんの携帯を取り上げるのを横目に、私は。
初めて、真ちゃんの頬を思い切り、ひっぱたいた。