もやしを一本取っちゃった彼女は、気まずそうに元の場所に押し込むと、振り返って、ごめんなさい、と呟いた。
悪い人では…ない、んだと、思う。
私の部屋と、哲の部屋を繋ぐ、ドア。
どうしてか、私のグリーンのシーツが画鋲で留まっていて。
ドア自体が、隠されている。
「……ねぇ」
彼女は、もやしに毒気を抜かれてしまったかのように、静かに私に向き直った。
「あなた、真也を好き?」
「…うん、好きですよ」
何を訊かれても、まっすぐに答えようと、思った。
「彼も……あなたを好きだと言ったら…?」
「聞き流します」
って言うか、もし仮にそうだったとしても。
口に出さないだけの友情が、ある。
哲と真ちゃんの間、には。