「どうして隠すの!」
「いねぇって言ってんだ!」
無理に哲を押しのけて、階段を上がろうとする彼女の腕を、掴んだ。
私は、私より背の高い彼女の腕を掴んだまま、睨む彼女の視線を、まっすぐに受け止めた。
「……とりあえず…押し込みは…マナー違反ですよ?」
「……………あなたに何がわかるのよ!」
ああ…。
何もわかんないよ。
何も、知らない。
理解も出来ないし、共感もできない。
「彼氏がちゃんといるくせに!」
うん。
うん、そうだね。
男女の友情って……成り立たない、んだよね。
何も知らない、と言った私の言葉を、何ひとつ信じてはくれていない、彼女。
私と、哲と真ちゃん。
私が、哲を選んだ時からじゃなくて。
最初から……私たちのバランスを取っていたのは。
哲と真ちゃんの、友情。
哲と真ちゃんの間にある、信頼関係。
私を含めて、女の子にはわからない、もの。
私と真ちゃんの間には、なかった、もの。
……わかるわけ、ないよ。