もそもそと、スコーンをかじる。
もそもそと、小さなサンドイッチを、口に運ぶ。
ほんのり甘いし、ほんのりハムの、味。
ああ、ハムの味がしたよ、って真ちゃんに言わないと。
甘い辛いだけじゃなく、固有の味がしたら、ちゃんと報告することになってる。
心配、してくれてる。
蜜のピアノが聴きたいわ、と。
しばらく黙って紅茶をすすっていたエレンさんは、困ったような笑顔を浮かべて。
若い頃、私の夫はバイオリンを弾いていたのよ。
オーケストラで、コンサートマスターだったんだから、と。
そっと私の手を、取った。
「…コンマス?」
………すげぇ。
真ちゃんのおじいちゃん、チョーカッコいい…。