繁華街の空いたスペースに単車を留め、私とエリカは煌びやかなネオンの中に足を踏み入れた。


どこを見ても柄の悪い若者達が、そこここにしゃがんで屯している。


……紅蓮の全盛期には、こんな光景なんて見られなかったのに。いや、少なくとも樹が、今のように金利主義に紅蓮を利用するまでは、絶対にこんな事はなかった。


「……柄の悪い連中、また増えたね」

エリカがポツリと呟いた。

私はそれに、何も言い返せない。


いつしか繁華街から少し離れて、ホテル街に足が向いていた。




何気にその方も用心深くチェックしていて、どん底に突き落とされるようなものを目にしてしまった。




彼氏の樹が、知らないオンナと一緒に一軒のホテルに消えていく様を、ただ呆然と見遣るしかなかったのだ。


エリカもそれに気付いて、慌てて私の腕を掴んで逆方向に歩き出した。


余程慌てていたのか、前から来た誰かにぶつかってしまい、その反動で思わず尻餅をついた。


「あっ、わり。……って、お前らかよ」


失礼な言い種は、エリカの彼氏のヒロのものだった。



180センチ近い長身を、背中に竜の刺繍が入った黒いジャンパーとダメージジーンズで包んだヒロは、10人中8人が振り返るようなイケメンだ。


「ヒロ!!アンタ何でここに!?つーか、まさかアンタもどっかのオンナとホテル行くとか言わないよね!?」


眥をギンと上げて、エリカはヒロを睨んだ。


「行かねーし。つーか、お前らちょっと付き合ってくんね?」


ヒロが指し示したのは、24時間営業のファミレスだった。