教室に戻り、ぺたんこの鞄を持つと、ずるずる足を引きずるようにしてその場から離れた。

黒埼女子学園、2年C組。

スレてない女の子ばかりのこの高校は、私達みたいな奴等には少し窮屈過ぎる。

学校でも私、遊佐椿(ゆさ つばき)と杉田エリカは浮いた存在で、皆が私達を遠巻きに見ている。

誰もが私達とは関わろうとはしない。

そう、例えば教師でさえも。


それはそうだろう。


付き合っている男が全国的に名の知れた暴走族のトップに立っているとなれば、触らぬ神に祟りなしとばかりに私達は学校中で無視された。

まぁ、別に無視されても問題はないけど。


そう、私の彼氏は全国に有数の支部を持つ暴走族「紅蓮(ぐれん)」のトップ、掛井樹(かけい いつき)。

樹と付き合いだしたのは、まだ私達が中2の頃の事だった。


その頃はまだ樹も紅蓮の下っぱで、私もエリカも樹やそのツレのヒロ(櫻井浩史)の後ろにくっついて歩くだけだった。


下っ端なりに楽しかった、あの頃は。


それなのに、高校に上がると同時に樹は紅蓮のトップに指名された。そしてヒロはその№2に。

私とエリカは、紅蓮に彼氏や兄弟がいる女の子達によるレディースチームを新たに創り、紅蓮の傘下に入った。



紅蓮と、紅蓮に関わる女の子達を護る、ただそれだけの為に。



紅蓮のチーム員に関係する女の子達となれば、敵対チームの格好の餌食になりかねない。自衛の目的を兼ねて、このチーム『蘭』を立ち上げた時は、皆で紅蓮を護ることを信条にした。


正直言うと、今の紅蓮に私達が護る価値があるのか、私自身が分からなくなっているのだけれど。