突然の事に頭が真っ白になり、母はどうやって自宅に帰ったか覚えていない。


母がベッドに横になっていると、玄関のチャイムが鳴った。


出る気にもなれず居留守を使うが、今度はドアを叩く音が聞こえる。


仕方なく立ち上がり、覗き穴から見ると父が立っていた。


ギブスも取れて足はすっかり治っている。


ドアを開けると、


「居ないのかと思った。」


そう言って父は家の中に上がり込む。


スタスタ行く父の後ろを、母はゆっくりと歩いて行く。


「元気ないけど、なんかあった?」


母の様子がいつもと違う事に気付き、父は優しく問いかける。