「そっか……わかった。起こしてごめんね。天野くん」


そのときの千春の顔が寂しそうで

悲しそうで。

また、言えなかった。


「ちは――」

「私、小さいころ天野くんすきだったよ」

ドクンッ――……。

今、なんて、言った?


千春が、行ってしまうのに。

扉が閉まってしまうのに。

動けない。

まるで金縛りにあったように。

「千春っっ――……‼」

動け。

動け‼

千春の後を追いかけて、腕をつかんだ。