教室には、雨音とカリカリと響くシャーペンの音しかない。


結構な時間をかけて、ようやく日誌を書き終わった。稚早は、まだ起きない。



何気無しに稚早を眺める。


暫くすると、むくりと稚早が起き上がった。


「か、浅谷?何で・・」


目をごしごし擦りながら、もごもごと稚早が訊ねた。

「日直だったの。加藤くんも、早く帰りなよ。」


そか、と返す稚早と目を合わさないで、黒板を消して行く。


私は、彼を「稚早」とは呼ばない。


稚早も私を「花柄」とは呼ばない。


幼馴染みの間に垣間見得る大きな溝。


きっと埋められる事はない。心の隙間。