『かつての少女では、在りませんでした。』


なんて、物語のフレーズが頭の中を駆け巡って行った。

はぁ、と溜め息が出た。陰鬱な鉛色に染まった空を、私は窓越しに眺めていた。


私の名前は浅谷花柄【アサヤカエ】。高校生で16歳。

因みに只今数学の授業中。
ゆっくりと窓から視線を教室に移した。

クラスの半数は突っ伏して寝ていて、極僅かな優等生達だけが、真面目に先生の話を聞いていた。


まぁ、午後一番の授業なんてこんなもんだろう。


開け放たれた窓から吹く風が、私の髪を撫でた。


顏にかかるが、思った以上に長くて、少し時の流れを感じた。


私は再び窓の外に視線を戻した。


鉛色の空は、気付かないうちに雨を溢し始めていた。

室内で雨にうたれるのは御免なので、渋々窓を閉めた。

再び視線を前に移すと、視界にやけに入り込む金色。


今日も、ヤツは私の斜め前で爆睡を極め込んでいる。

その、整った横顔が、綺麗な金髪が、私の心を沈ませる。