稚早の家を出た時、まだオレンジ色だった空が、もうすっかり、闇に呑まれて仕舞っていた。


慌てて帰宅して、キッチンに向かおうとしたら、稚早とかち合った。



「遅かったじゃん」



不機嫌そうな稚早は、行く手を阻むように立ち塞がる。



「何様よ?」



その、不器用な心配の仕方に、少し可笑しくて、思わず笑ってしまった。

稚早はもう、呼び方の話を、追求することはない。

彼は、そう言う人間だ。



「笑うな。俺は稚早様だ。そんな事より、5分で着くスーパーに買い物のに行くのに、どうしたら一時間も懸かるんだ?」



「沙希にあって、話してたの。最近、連絡取って無いんだって?」



不安そうだったよ?と言うと、稚早は何だか嫌そうな顔をした。



「お前らそんなに仲良かったっけ?」



「普通だよ。」



稚早が腕を除けたので、その横を通り抜けた。


そして、思い出した事を訊ねた。


「今晩カレーでいい?」



OKが出たので、私は、稚早の家のだだっ広いキッチンに、足を進めた。