近所のスーパーで買い物を済ませ、稚早の家へ帰ろうとして、足は止まった。


「花柄!」


少し先から駆けてくる彼女に、小さく笑顔を作る。



「沙希、久しぶり」



「久しぶり。中学以来だね!」


沙希は、稚早の彼女。付き合い出して一年くらいになる。


「そう言えば最近、稚早くんと連絡取れないんだけど、花柄何か聞いてない?」


彼女の質問に、嫌な汗が流れた。



「聞いてないよ。加藤くんとは、余り関わらないから。」



慎重に答えを返し、養子を伺う。



「そっかぁ、残念」



彼女は、ふんわりした可愛らしい雰囲気だが、実は腹黒い。


今の質問に、YESを返していたら、明日にでも酷い噂が広がっていたことだろう。



「て言うか、稚早って読んでないんだね?」


にこっと笑って、沙希が呟いた。


「うん」



心臓に、鉛が落ちる様な感覚を覚える。



「良かった。高校に入ってから、花柄とは会う機会が無かったから。」



強張った私の手を握りながら沙希は笑っている。



「約束。破っちゃ駄目よ?意味、解るよね」


じゃあね、と言って彼女は去って行った。


沙希が去った後、膝から力が抜けて、その場に座り込んだ。



「・・・ッ」