そんな気持ちは当然香澄には理解してもらえなかった。


「……恭哉は本当は咲絢ちゃんのことが……」

「そんなわけねーだろ」



俺が咲絢を見るのは、幼馴染みとして心配してるからだ。

嫌な仕事をさせられてないか、精神的に参ったりしてないか?


兄貴みたいなもんだから、と去り行く香澄に苦笑した。





だけどその思い込みは間違いだと、初めて気がつく。


香澄が言ったことが正しかったのを俺がようやく理解したのは、咲絢主演のドラマが始まってからだった。




………テレビに映る『咲絢』は、俺が知ってるあいつじゃなくなってた。


ガキ臭かった頃の面影は残しているけど、そこに映し出されるのは、いつの間にか『女』として成長していた咲絢だった。




胸がジリジリ焦がされるようだ。

嫉妬にも似たこの感じ。

咲絢に、手が届かないもどかしさ。



咲絢の手を離して、『妹が……』と言ったあの日の自分に戻りたい。