バタバタバタ


千尋が階段をすごい勢いで降りてきた。


寝ようと歯を磨いていたアタシ



千尋はパジャマにダウンを羽織っていた。


「出かけるの?」


慌ててうがいをして 千尋に声をかける。


千尋はそれに答えずに

何かを探している様子だった。



「千尋?」


サイドボードの上にあった ニットの帽子を深くかぶって振り返る。


「千尋?具合いいの?」


あきらかにいつもの千尋じゃない。


アタシの問いかけに答えずものすごい勢いで
玄関に向かって 靴をはいた。



「戸締りしておけ」


そう言うと千尋は家を飛び出していった。


茫然と立ちすくむアタシ



どうしたの?何があったの?


あんな千尋を 初めて見た夜だった。