中には、イロイロと面倒見の良い後輩思いの人もいたが『年功序列』という言葉もシステムもあまり好きではなかった。

「ココではみんなそれぞれが補い合い、上も下も関係無いの。別に何にも出来なくたって仲間は仲間だし、助け合って生きていく。それがココでの最低限かつ唯一のルール」とチャイナは楽しそうに言う。

「そう言えば名前。もう決めたか?」

「いやまだ…決めてない…」

「早いとこ決めちまえよな、だってじゃないと『お前』とか『あんた』とか三人称でしか呼べないじゃん。それってなんかこう他人行儀というかなんというか壁みたいに感じるからイヤなんだよ、うん」

チャイナはやたらと身振り手振りをしながらモヤモヤした胸の中の『思い』を伝えようとしている。

全くその通りだ。こんなにも話をしているにも関わらず、名前を名乗らないのはチャイナのいうところの「なんというか壁」と言う言葉通りだ。

最初は警戒し、もしくは自分は「アンタらとは違う」と『壁』を作っていたのは事実だが、今はチャイナの『思い』やガリバーの『作品』に心を動かされたのか『壁』は必要無い気がした。

「さぁ名乗ってみたまえ!スパッとさぁ(笑)」と急かすように言った。

「う~んそうだな…じゃあ、私の名前は『N』!車でいえば、ニュートラルの『N』だ。私は『大人』でも『子供』でもないかと言って『こどな』でも『チルダルト』でもないかもしれない。何処へも傾かない『N』だ」

少し弁舌でもするかのように名前を名乗った。

それは、どこか自分自身に言い聞かせるようでもあった。

言うなればコレは決意表明なのだと思っている。
ホントは何の取り柄のない普通な自分。

ノーマルの『N』と言いたい気持ちも正直あったけど、その時はそんな風に言ってしまった。

「あっははは!やっぱ最高に変わり者だよ!『N』は」と大笑いしながら、チャイナは肩をドンと小突いてきた、とても嬉しそうにだ。

何だか少し照れくさかった、恥ずかしくて耳が熱くなった。

けど、同時に互いの間には信頼関係が生まれたと私は感じ嬉しかった。

そうしてしばらく歩くと何やらまたガリバーのとは違った雰囲気のテントにたどり着いた。

「ここがこれから訓練をしてくれる『大佐』のテントだ」

また新しい名前が出てきて、イチイチ覚えていられるか心配になった。