「ここで僕はリーダーなんて呼ばれてるいるけど、特にこれと言って何か出来るワケではないんだ」

「そうそう、ガリバーはいるだけでみんなが安心出来るんだよね~ホントに何にも出来ないけどね(笑)」とチャイナはチャチャを入れる。

「けど、ガリバーの絵はスゴいんだぜ~!な~んかこう心に染みるっていうかなんていうかさ」

よくよく辺りを見てみると絵の具やらペンキやらが散乱している。

「見てみるか?」とチャイナは言うとまた外に連れ出された。

「ほら」と通路を灯りで照らすと壁一面に絵が描かれていた。

来るときには踏み外したら、どこかへ落ちてしまうような恐怖感から足元しかみておらず、全く気が付かなかった。

私は芸術はよく分からない方だったがチャイナの言っている意味がなんとなく分かった。

そして、言葉を失った。こんな経験をしたのは初めてだった。

圧巻とはこう言う感覚なのだろうと感じた。

「なっ」とチャイナは得意気に聞いてくる。

一気に意識を取り戻した私は「うん」とだけ言った。


本当はこの暗闇の静寂の中、ゆっくりとこの『絵』と表現すべきか分からない作品を見ていたい、そんな気持ちだったが、それを遮られてしまった。

「ガリバーはこの地下の壁をぜ~んぶ塗りつぶすつもりなんだぜ!見てみたいよな~。それまで生きていられるなら…」

「そんな事言うなよ。一緒に見ようよチャイナ…」と自分自身に言い聞かせるようにそう言った。

「そうだな~。うん、一緒に見れると良いよな。うん…」珍しく神妙な面持ちでチャイナはそう言った。

「もういいか?」と中から声がする。

中に入ると少し照れくさそうにガリバーは「そんな大それたもんじゃないだろ」と言った。

そして、表情が一瞬で変わり「これからは沢山見たくないものも見なければならないし、聞きたくない声を聞かなければならない」

「だけど、それは現実で目を瞑る事も耳を塞ぐ事も出来ない。進むしかないんだ…僕らが僕らで、い続ける為には…それしか道は無いんだ。『今』は…」と悲しそうに言う。

「だからそんな『今』を変えるために犠牲も厭わない…そういう事ですか?」


「残念ながら…」とガリバーは言う、チャイナはウンウンと頷いている。