「よろしくって…そんなの出来る訳ないだろ?そんな事!」

「みんな始めはそうさ。やったことないから不安な気持ちも分かるよ、うん」

「でも、やる前から出来ないなんてのは分からないじゃないか?だってやったことないんだから、なっ」

「それにどこにも行き場なんてないんだ。ココで生きて行くには最低限の仕事はしてもらわないと。まさか、タダ飯が食えるとでも思ってた?それはチョット甘いんだな、うん」

「まぁまずはウチのリーダーに顔を通しておこう、モタモタしてるから他の奴らはとっくに済んでるぞ」

「ちなみに俺はチャイナって呼ばれてるんだ、ココでは名前なんて必要ないから(笑)」

納得いく説明はほとんどなかったが何故?と疑問だけが浮かんだ。

「それはそうとなんでチャイナなのさ?」

「俺、中国生まれの日本育ちだから(笑)」

「んなこたぁ、いいからほら、行こうぜ」

「あっああ分かった」

結局は言われるがままに歩みを進めざるを得なかった。

薄暗い通路を進んで行くとどこまでも深く深く闇の中へ進んでいるような不安な気持ちで一杯になった。

しばらくすると、通路の先がぼうっと薄明かりが見えてきた。

目を凝らすと小さなテントらしきものが見えてきた。

チャイナは「お~い、ガリバーいるか~?」と声を上げると中の方から「あぁいるよ」と声がする。

反政府組織のリーダーが一体どのような人物なのか想像も付かなかった。

きっと見るからに百戦錬磨と言った感じの荒々しい豪傑なのだろうと乏しい想像力はイメージ像を頭の中に描き出す。

恐る恐る中へと入っていくと30代後半くらいの何となく冴えない痩せた男が中にはいた。

想像とは程遠く何とも穏やかな面持ちでニコっと微笑むと「ようこそ」と優しく言った。

その「ようこそ」にはどんな意味があったのだろうか?

ただ単に仲間になる人間を快く迎えると言った意味ではないように感じた。

どこか寂しいような悲しいような感情が含まれていたように思えて仕方なかった。

きっと「ようこそ、クソったれな現実へ」もしくは「君も腐った世の中に弾かれたんだね…」とそんな意味が含まれているのだと直感的にそう思った。