チャイナは「『大佐』はマジで気合い入れないと手強いから気を付けろよ」耳打ちしてきた。

テントの前に立った瞬間中から「入れっ!」と大きな声が響いた。

コレだけ大きな声だとガリバーまでビックリして筆を落としてしまうんじゃないかとクスっと笑う。

チャイナが肘で脇をドンと小突いてやはり小声で「おい、言っただろ?気合い入れないとヤバいって…俺はチョット苦手だからココで待ってるからさ、ほら」と中へ押し込まれる。

「チャイナにも苦手なモノあるんだな(笑)」

「良いから行けって(笑)」

中に入るとそれこそ百戦錬磨といった感じの筋骨隆々の上半身裸の男が腕を組み仁王立ちしていた。

「寒くないんですか?」などと冗談でも言える雰囲気ではなかった。

おそらくこの男が『大佐』なのだろう。

「じゃあさっそくだが訓練を始めよう」と大佐はテントの隅にある、机を指差した。

「この中から好きなモノを使って私を倒してみなさい」

ナイフのような刃物や小さな拳銃、棍棒やら様々な物騒なものがズラリと並んでいた。

「私が『始め』と言ったら好きなモノを選んでかかって来なさい」

こんな物騒なもの使えるワケないと直感的に思った。

ハッキリ申し上げて腕力には自信はないので、何かを選び立ち向かうべきなのだろう…

そんな事を考えているうちにそれこそおかまいなしに大佐は「始めっ」と怒鳴った。

自分自身意外な事に机には目もくれず、丸腰で立ち向かった。

それが私の信念だからだ。

次の瞬間には大佐の拳が顔面にミシッとめり込んだのを確認すると、意識はブラックアウトした。

どれくらい経ったのだろうか私は夢を見ていた。

それは、なんというかフワフワとした感覚で現実感がなかったから夢だと分かった。

私の住む町は再開発が進み、父や母から聞いていた、景色とはかけ離れていた。

駅前には大きなショッピングモールやら高層マンションが立ち並んでいる。

それが私の知っている町。

ふと気が付くと父や母から聞かされていた昔の町の中にいた。

正確には聞いた事からイメージしていた昔の町なのだろう。

私の手は小さく、足にはスニーカーを履いていた。

まるで子供に戻ったような感覚になっていた。