「じゃあ、行きますよ・・・あ。

行き先は?」

行き先を聞かれ、宿名を言う。

・・・

そして、目的地へと人力車は走り出した。

・・・

「なんだか、ごめんなさい」

「なぜ、謝る?」


「怪我なんかしちゃって・・・その・・」

「履き慣れないんだから仕方がない。

それに、これにも乗れたし、京見物を楽しもう」


私の言葉に、亜紀は微笑んだ。

…間もなくして、亜紀がまた口を開いた。



「…ところで、なぜ宿に?

今日帰るのに・・・」


「誰が帰ると言った?」

「?!!」


「今日は泊まりで来た」

「…でも、仕事が」


「光司も、光輝も知ってる事だ。

明日の夕方までに帰れば、仕事は出来る。

私は、もう少し、こうやって亜紀と二人きりで、

過ごしたいんだが、嫌か?」