「美桜……」


今日初めて優しく名前を呼ばれた。


「ううっ……」


嬉しくて、でも哀しくて。


溢れる涙を止められない。


「……一度だけ……キスしたい」


輪郭を確かめるように、翔平の手があたしの頬を探り。


濡れる頬の涙を親指でぬぐって、そっと口づけた。



幸せなキスじゃない。


とっても哀しくて切ないキス……。



でも、決して、最後じゃない。


そう信じて。



この温もりは、そのときまで忘れないから……。