コロコロと転がるそれは誰かの靴先で止まった。
声の主が缶を拾い、そのまま缶を目で追うと……
「!!!!」
翔平の顔が現れた。
「へこんだな」
落とした衝撃で、缶の側面がべっこりへこんでいた。
「まあ、味は変わらないし問題ないか」
修復を試みる翔平だったけれど、スチール缶はそう簡単にはもどらない。
…そんなのはどうでもよくて。
頭の中は完全にパニック。
「あの……」
どうして、ここに。
そう聞きたいのに口がうまく回らなくて、ただ目の前の翔平に呆然とする。
まだリハビリ中。
こんな不意打ちの2人きりなんてどうしたらいいかわからなくて、数日前のあたしにもどってしまう。