私はそれ以来


気づいたら平田くんのことを考えてた。




もう一回会いたい…なぁ。




いやいや、好きとかじゃない!




ただ…お礼がしたい。





でも…あんま顔覚えてないな。






学年の子とか全然知らないし。




てか

もしかしたら先輩かもなぁ。





野球部の人に聞いてみるとか?




いやいや
恥ずかしすぎ。




それに

私のことなんて覚えてないかも。




そんなこんなで


何もできないまま




季節は中3の春。






クラス替えの掲示を見ていた私の視線は



ある名前を見て止まった。




「平田 修」




う、うそ…平田くんってこの人?





あ。





「村松 沙依」





同じクラスのところに私の名前。






掲示板の前で


私の心臓は高鳴る。





いや、落ち着け。


“平田くん”かどうか決まった訳じゃない。





別の平田くんなのかも。





早く…早く確かめたい。





私は急いで階段を駆け登る。





あーなんで三年は最上階なの!




教室のドアの前で


荒れた息を整える。




あ、髪

変じゃないかな?




いつもは気にしないようなことが


なぜか気になる。




…恋、だなぁ。





「あんた、何してんの?」




うそ…




聞き覚えのある声に

後ろを振り返ると




「あ…」



やっぱり…“平田くん”だ。




「…?」




そんな私に構うことなく


平田くんは不思議そうに教室に入っていった。




…やっぱり
覚えてなかった。