「え、トトロ⁉誰々⁉」
「はいはーい!うちと沙依ちゃーん!」
少しみんながざわつく
人前で歌うのはかなり恥ずかしかったけど
なんとか歌いきった。
「てか、トトロとか驚きだわー」
「めっちゃうけたー」
聞こえてきたのは
よく知らない男子の会話。
そっか…トトロってちょっと変な選曲だったのか
みーちゃんにも恥かかせちゃうかな?
迷惑かけてばっかりだなぁ、私。
平田くんは…どう思うかな
なんて思って
ちらっと平田くんを盗み見る。
うわっ…///
ばっちりと視線がぶつかる。
「トトロ好きなの?」
「あ、うん…普通に」
「そっか。俺も普通に好き。」
「そ、そうなんだ…」
「ん。」
「……。」
「……。」
周りはがやがやうるさいのに
私たちの間には沈黙が流れる。
少し気まずいのに
嫌じゃない。
なんか、2人だけみたい。
な、何か話かけてみようかな…?
せっかくのチャンスだし。
でも緊張するよ…
そんなことを1人考えていると
「あのさ…」
「ん?」
急にこっちを向く。
少し鋭い平田くんの目が
まっすぐに私を見つめる。
な、なんだろ
「俺、村松が好き。」
周りの騒がしい声なんか聞こえなくなって
少しかすれた平田くんの言葉だけが
私の耳に届く。
でも、頭がついていかない。
好き…?
平田くんが…私を…?
私が反応できずにいると
聞こえないととったのか
「だーかーらー!」
平田くんがさっきまで私が使ってたマイクを手にする。
そして立ち上がり
「村松のことが好きです。俺と付き合って下さい。」
しゃべるのもやめて
みんなが一斉にこっちを向く。
部屋には
最近流行ってるアイドルの歌が流れ続ける。
あ…ここサビなんじゃないかな?
歌ってた子に悪いなぁ。
そんな事が
私の頭の中を流れる。
私には
みんなの視線と
まっすぐな平田くんの視線。
私はその視線に飲み込まれるように
小さく答えた。
「…は、い…///」
「ん、さんきゅ。」
そう言って
嬉しそうに少し照れながら笑う平田くん。
「…じゃ、俺部活戻るわ!」
すぐに荷物を持って立ち上がり
ドアへと向かう。
そしてドアに手をかけ
外にでようとしたそのとき。
「…っ///」
平田くんが
私を見て
『また明日』
そう言った。