もう、離さない



ぼくの手の中に帰ってきてくれたことが嬉しくて

ぼくは泣いてしまいそうだったんだよ



きみは前と変わらぬ綺麗な声で

ぼくのためにさえずりの歌を聴かせてくれた



鳥籠の扉には、

大きくて冷たい錠前を



もうきみが二度と

ぼくのそばから離れぬように





でも小鳥は

自ら鳥籠を逃げ出した



えさをあげる一瞬のすきに



まだ夜も明けきらぬ

白い月が浮かぶ中

冷たい朝露に羽根を濡らし

小鳥はぼくの胸を飛び立った





きみが残した羽根は

たくさんの思い出とともに

ポケットの中にしまっておくよ





さよなら

可愛い小鳥





さようなら



愛しき恋人――










Fin.