ふたつの指輪を手の中で愛撫しながら、その隣に置いてあった真っ黒な四角い箱を手にとった。

開けてみると、中には洒落たストライプのネクタイと――赤い小さなメッセージカード。










先生へ


メリークリスマス!
先生が本物の先生になったとき、一番につけてくださいね。

これからもずっと、
ふたり一緒にいれますように…


          零










カーテンを開けると、窓ガラスにはりついた冷たい空気が身体を包んだ。


「零……」


愛しい名を呼んでみても、どこからも返事はかえってこない。



シャンプーの甘い香り――窓の外にキンモクセイと、零の笑顔の幻を見た気がした。