部屋の外へと続く廊下の扉を、開ける音がした。


ようやくおれは起き上がり、服をまとって出ていこうとする彼女の後ろ姿を見送っていた。

彼女がもし、ここで振り返ったならば――きっとおれは、本能のままに彼女を抱きしめていたに違いない。


だが悲しいかな、彼女は振り返らなかった。





パタン、という音とともに木の扉が閉まり――広い部屋に残されたのは、なにもかもを失った男と愛しい彼女の残り香だけ。

やっとのことで息を吐き出し、枕元を見やると、そこには小さな指輪がふたつ、ぽつんと寂しそうにたたずんでいた。



それが――彼女が出した、答えだった。