カツカツ、そんな足音が近づいてくる。やがて、その音は止まった。顔を上げれば見慣れた革靴。更に顔を上げれば見慣れた顔。

『ゆ、せぃ。寂しかった。』

思わず手を伸ばす。そうすれば、彼は私の手を引っ張り立たせてくれる。私は、迷わず彼の胸に倒れこむように寄りかかる。

『ほら、入りな。』

彼は私を支えたまま鍵をあけて部屋に入れて、リビングまで連れて来てくれた。テレビをつけて暖房を入れて、あぐらをかいた貴方の足の上に私は座る。そうすれば彼は抱き締めてくれて、頭をポンポンされる。

『いつからいたの?冷たい…。』

心配そうに、顔をのぞきこまれる。

『5時…』

『6時間も外にいたの?はぁ。』

『ごめんなさい…』

少し怒った様子の祐晟に私は謝る。それから、甘えたくなって祐晟にすりよる。でも、その時にした女物の香水の甘い香りに泣きたくなる。

そうなんだ、私と祐晟は付き合ってなんてない。祐晟には、それはそれは可愛い彼女がいる。わかってる、でも私は祐晟から離れられない…。