やはりここでも、展開を面白い方向に持って行きたがる悪い癖は健在なようで、そういう奈々には、さすがは親友だ……と諦めもつく。
愛菜も、そんな奈々にはもう慣れているようで「仕方ないなぁ」とつぶやくと、クイッとあたしの顎を持ち上げ、深いキスを落とす。
が。
「……ちょっ、ちょっと!チュッとするだけにしてよ!興奮しちゃうじゃないよっ!!」
なんでここでディープなやつをするのだ愛菜!
唇が離れると同時に、照れまくったあたしは、そう、やいやいと言い、愛菜に噛みつく。
「マコこそ、口を拭うのはやめてほしいよ……。それ、けっこう傷ついちゃう」
「いや、愛菜のグロスが……。ご、ごめん」
……、……。
ええ、なぜかあたしは、キスのあと、口を拭う癖があるらしく、グロスのせいにしてみたところで、普段のキスから口を拭っちゃっているものだから、これっぽっちも説得力がない。
誤解がないように言っておくと、けしてベロチューのベロがすごかったから、とか、キスそのものが嫌い、というわけではないのだ。
面白い方向に話を持って行きたがるのが奈々の悪い癖だとすれば、さしずめあたしは、最愛の葉司……愛菜とのキスでさえ、どうしてか口を拭ってしまうのが悪い癖、ということである。