「ここにいるのがあんまり楽しくて、ついマコのことがおろそかに……。本当にごめん!」

「いや、それはそれで悲しいから、もう何も言ってくれるな、愛菜。うーん、違うか。葉司? えー……。どっちで呼べばいいの」

「じゃあ、愛菜で」


愛菜かいっ! しかも即決したよこの人……。


「……。じゃあ、説明してもらってもいい?」


いろいろとツッコミたい気持ちは山々なのだけれど、そんな気力もないし、話も進まない。

そう思ったあたしは、何度か頭を振って気持ちをなんとか切り替えると、質問を投げた。

大いに抵抗はあるものの、とりあえずここは葉司が呼んでほしいように“愛菜”と呼ぼう。

女子高生の格好なのに“葉司”も変だし、かといって、本当は男の子なのに“愛菜"もおかしな話だけれど、だって、もう頭がおかしくなりそうなくらい混乱していて、自分でもさっぱりわけが分からないから仕方がないのだ。


あたしの質問を聞くと、愛菜は一度メルさんに視線を投げ、察したメルさんは席を外した。

スタッフルームは2人きり。

さっきまでメルさんが優雅にハーブティーを飲んでいたソファーに座った愛菜は、じっとあたしを見つめてくるも、しかし口は開かず、ズーンと重苦しい空気がしばらく鎮座した。