「お口に合うといいんだけれど。どうぞ、ローズヒップのハーブティーよ」
「何から何までずびばぜん」
メルさんがお茶を淹れてくれるというのでソファーに座って待っていると、ほどなくして、小花柄が上品にプリントされたカップが運ばれてきて、あたしはそれを受け取った。
それを飲みながら、スタッフルーム内を見渡したり、お菓子をつまんだり、とりあえず、話せる状態になるまで気持ちを落ち着かせる。
しばらくすると鼻水も治まり、向かいのソファーに深く座って、足を組みながら優雅にカップを口に運んでいるメルさんを見つめた。
「実は昨日、彼氏に“オトコの娘”だってカミングアウトされたんです。その日はつき合いはじめて1年目の記念日で、たぶん節目として言おうと思っていたと思うんですけど、心苦しいからカミングアウトしてもいい? って……」
「そうだったの」
「で、どんなことかと思ったら、いきなり女子高生の格好で戻ってきて。今日だって、わけが分からないまま連れてこられて、お店に入ったら入ったで放置プレイですよ。あたしもう、どうしたらいいか分かんなくて……」
「なるほどね。それはさぞかし驚いたことでしょう。お気持ち、お察しするわ」
「恐縮です」