泣き止まなきゃ、とは思う。

けれど、焦れば焦るほど、ますますしゃくりあげてしまって、どうにもならない。

そんなあたしに、メルさんは「こっちで休みましょう?」とどこまでも優しく接してくれて、スタッフルームまで連れていってくれた。


「ずびばぜん、ごべいばぐをおがげじで……」


鼻水がすごすぎてちゃんとした日本語を話せたかは分からないけれど、メルさんが貸してくれたレースのハンカチで鼻をかみながら、取り乱してしまったお詫びをする。


「いいのよ。あなたみたいな女の子は初めてじゃないし、落ち着くまでここで休んで、話せるようになったら話してくれたらいいから」

「ありがどうございばず」

「いいえ」


メルさんは柔らかに微笑む。

ああ、この微笑み、癒される……。


でもそっか。

メルさんの対応がやけに手慣れていると感じたのは、あたしのほかにもここへ来て取り乱してしまった女の子がいたからで。

それも、1人や2人といった少人数ではないことが、彼女の対応のし方からも窺わせる。

ほかのスタッフの娘も特に気にしていた様子もなかったし、日常茶飯事とまではいかないまでも、おそらくよくあることなのだ。