けれど、面白おかしい葉司の格好をツッコめるような雰囲気はなく、また「バカだよねー」や「あははー」と笑い飛ばせるような空気感も、スタッフルールにはなかった。
ので、のどの奥まで出かかったそれらをぐっと飲み込み、言い終わると、何やら険しい表情で考え事をしている葉司の反応をそっと窺った。
そうして待つこと、数分。
意を決したように口を開いた葉司は、あたしの目をまっすぐに見つめると、こう言う。
「まずマコ、レンタルビデオ店のバイトはすぐにやめたほうがいいと思う。それができないようなら、しばらく休んでほしい」
「は、はあ……」
「それと、これはマコがうっかりさんだからだと思うんだけど、だいぶ掻い摘まんで話してるでしょ、この話。最初から話してくれる?」
「あ!」
そういえば、そうだ。
どういう経緯で茨城先輩と一緒にいたのか、という部分を、葉司には全く話していなかった。
思わずソファーを立って声をもらすと、葉司は呆れたように笑い、小さく「マコのそういう抜けてるところ、やっぱ可愛いなぁ」と。
どうにも反応に困る台詞を吐いた。
ちょい、ちょい、葉司。
あなたの可愛いと感じるポイント、だいぶズレているのではないのかね? ……謎だよ、葉司。