葉司が言いたいのは、危ない目に遭いそうだったのにどうして笑うんだ、もっと自分を大事にしてくれよ、と、そんなところだろう。

つい2カ月前まではラブラブっとつき合っていたのだ、別れたとはいえ、元カノのピンチに助けに入るのは不思議ではないような気がする。


「ごめん、葉司。本当にありがとう」

「うん。無事でよかった」


改めて真面目な顔でお礼を言うと、葉司はやっと少し笑い、ハーブティーに口をつける。

それを見て、あたしも急に温かいものを体の中に入れたくなり、ティーカップを持った。


「じゃあ、今度はマコの番だよ。話しにくいかもしれないけど、聞くね。どうしてあんなことになってたの? あの男は何? 強姦までされそうになって、まさか彼氏なわけないよね」


2人で一息つくと、葉司は念を押すようにそう言って、いくぶん眼光を鋭くさせる。

その目こそ男前でかっこいいのだけれど、いかんせん、格好が女子高生で、ばっちりメイクもしているため、ミスマッチというか、なかなか面白い顔ではあるのは否めない。


「ああ、うん。……バイト先の、先輩。遅くまで開いてる美味しいケーキ屋さんを知ってるって言うから、案内してもらってたんだけど。なんか、騙されてたみたいだね、あたし」