「でね」
「あ、うん」
葉司が先を急ぐように口を開いたため、あたしはいったん思考を止め、葉司を見る。
とりあえずは、純平はバスケバカでゴリラなのだ、女の子のほうも夜まではつき合うまい、と思っておくことにしよう。
「続きなんだけど、立ち話をしていると、純平が『あれ? あそこで男と歩いてんの、マコじゃない?』って指差すんだよ。まあ、別れているし、新しい彼氏ができたんだな、って最初は思おうとしたんだ。でもさ…」
「うん?」
「なーんか嫌な予感がして。ほら、マコって、けっこう騙されやすいところがあるでしょ? もしかしたら、って思ったら、体が勝手に動いて、間一髪で飛び蹴り……みたいな」
「そっか。心配してくれたんだ、葉司」
「ありがとう」と伝えると「当たり前だろ!? だってマコだよ!?」と、急に身を乗り出してそう語気を荒げた葉司になぜか怒られる。
どうやら、にへら~と締まりのない顔でお礼を言われたことが、お気に召さないらしい。
いや、あたしはもともとパーチーメガネをかけたような顔なのだ、締まりなく笑ったところで大して変化はないのではなかろうか。
……いやいやいや。