「それで、なんで俺があそこにいたのかっていうと、純平が店に訪ねてきてさ、店の外でちょっと立ち話をしていたからだったんだ」
ぎこちない手つきながらもハーブティーを淹れてくれた葉司は、あたしが座っているソファーの前のテーブルにカップを置くと、向かい側に
座り、大股開きでそう言った。
スカートの中の様子がわずかに見え隠れしているのだけれど、あえて何も言うまい。
今はおそらく、愛菜ではなく葉司なのだ。
カツラを取ってそれをテーブルに叩きつけ、ぺしゃんこになった髪の毛を両手でグリグリとかきむしるような仕草をしている様子は、オトコの娘だとカミングアウトされた日、あたしに向かって 「えへへ。可愛いでしょー」とにこやかに笑って言った葉司とは全く違う。
完全に男の子目線で話をしている。
「……純平が? 1人だった?」
「ん? うん」
「そう」
スカートのほうは極力見ないようにし、まずは疑問に思ったことを葉司に確認する。
純平は確か、とある可愛い女の子から誘われたからイブはつき合えない、と言っていた。
だとしたら、女の子とは日中に会って、夜は葉司に会いに来た、そういうことだろうか。