「マコ、大丈夫!?」

「ふえ……?」

「よかった、間に合って」


そうしていると、今度は聞き慣れた懐かしい声をした女子高生に体を支えられる。

ここまで走って助けに来てくれたのだろう。

彼女……いや彼か、の息づかいはとても荒いもので、間一髪で間に合った、という安堵感も重なってか、ぎゅーっとあたしを抱きしめると、耳元で長いため息も聞こえた。


「よよよ、葉司!? なな、なんで……!?」

「うん。それはあとで詳しく話すから、まずは場所を移動しよう。立てる?」

「……な、なんとか」


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それから愛菜の格好をした葉司に体を支えられて向かったのは『ねこみみ。』だった。

『ねこみみ。』には、メルさんやアズミといった懐かしい顔も多数あって、明るい場所に来たことと、知っている人がいる、というだけで、今までの緊迫感が解きほぐされる。

メルさんに「しばらくスタッフルームを使わせてもらうね」と断りを入れた葉司は、そっとあたしの背中を押して中まで誘導してくれ、念のためなのか、内側から鍵もかけた。

密室だというのになんだか落ち着いた気持ちになるのは、やはり葉司と一緒にいるからなのだろうか、怖いどころか、逆に安心だ。