最後の最後に、本当の最後に、誰でもいいからまずはここを通れ!と、かろうじて動く両の眼球だけで、ざっと通りに目を走らせる。

すると、ひらり。


「アチョーーーッ!!」

「……ぐへっ!」


ガンッ、ドダダダッ、ベチャッ!!

スカートのようなシルエットが翻ったかと思った矢先、カンフーさながらのかけ声とともに先輩目がけて飛び蹴りをしてくれた人が現れた。

騒々しい音からも分かるように、先輩はホテルの自動ドアに見事に突っ込み、そのはずみで開いたドアから、さらに中まで転がっていき。

最後はエントランスの壁にカエルのようにぶつかり……ポク、ポク、チーン。

息絶える。


その一連の出来事を、まばたきはおろか、息すらできずに見ていたあたしは、気絶してしまった先輩がドアの向こうに消えていくのを、ただただじっと見守ることくらいしかできない。

そこのホテルの自動ドアは、人影が動くのは見えるものの、磨り硝子のようになっており、顔までは認識できない仕様のものだった。

ゆえに、自動ドアが完全に閉まり、先輩の無残な姿が見えなくなると、あたしは今さらながらに足が震え、腰も抜けてしまって、その場にへなへなと崩れ落ちてしまう。