逃げられる、と高をくくって油断していたところに急に先輩の腕が伸びてきて、一瞬のうちに背後に回られ、あたしの口と両手は、男の人のそれで簡単にふさがれてしまった。

抵抗しようにも力が強く、それでもなんとか腕をふりほどこうともがけど、そうすればするほど、先輩はギリギリと締めつけてくる。


「~~~~っ!!!!」

「だから言ったじゃん。力で適うわけないんだって。おとなしく俺のモノになってよ」

「ふふぁふぇんふぁ!!」

「ふっ、何言っちゃってんの?」

「うーうーうーっ!!」


「ふざけんな!!」「誰かー!!」と、あたしは言っているのだけれど、この通りの声もろくに出せない状況に追い込まれ、言葉にならない。

そのうち息苦しくもなってきて、そのせいか、はたまた恐怖からか、だんだんと足にも力が入らなくなり、急所を蹴り飛ばして逃げる気力も体力も、あたしには、もう……ない。


「さあ、行こうか、まことちゃん」

「……」


引きずられるようにして歩くオトナのホテルへの道が、涙でぼやけて見えなくなっていく。

バイトで一緒になるたび、用もないのに話しかけてきたり、雑な扱いをされても懲りずに言い寄ってきたりしていたのは、このため?

あたしのカラダが目当てだったっていうの?