「珍し。お前が溜まり場にオンナ連れてくるのは初めてじゃね?」

「……うるせ」


桜空をheavenの溜まり場の倉庫跡に連れて行ったら居なくてもいい春臣が居やがって、さんざん俺を茶化して遊んでいた。


うるせーな。俺にだって分かんねーよ。


なんで桜空が気になるかなんて知らねぇよ。


ただ一時でも離したくないってのだけは分かってるんだけどよ。


「外人ちゃん?名前はなんてーの?」

「春臣止めろ馬鹿。桜空が脅えてんだろ」

「サラちゃんっての?可愛いねー。けどサラちゃんが恐いのは鷹嘴だよね?」


ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。俺はただ無理矢理連れてきただけだし、コイツだって嫌がる素振りは見せなかったんだ。


ぎらりと春臣を睨んで椅子から退かせた。



スプリングが軋んで嫌な音をたてる、ボロいソファに座り、桜空を膝の上に乗せた。



桜空は顔を真っ赤にして俯いて、頑なに俺の顔を見ようとはしない。


業を煮やして、再びその口を塞いだ。



「……なんデ、こんなことをするノ……?」


顔は赤く染めたまま、桜空は涙をぽろぽろ溢す。


……何だろうな。何でだろう。俺にもよく分からない。


ただ分かるのは。


「……お前を離したくないと思ったからだ」