「いいえ。人の上に立つには充分な魅力がカイにはあるの。経営者には絶対に必要な条件なのよ。特にイタリアでは、ね」

「そうなの?でも人の上に立つって言っても、兄貴がやってたのは不良集団のボスぐらいだよ?」


暴走族のトップだった過去が役に立つ社会性ってどんなだよ?


「それが良いのよ。カイの回りに人が集まってるって証拠なんだから。それにね……」

「それに、何?」


兄貴は何も言わずに私とお祖母ちゃんの話に耳を傾けている。

兄貴にも、何か思うところがあるのかな?


「カノンと彼…アキだったかしら。離れ離れにはしたくないわ。大好きなんでしょ?」


なんでもお見通しなんだね、お祖母ちゃんは。


「……さっきのラリー、楽しかったわ。まるでお祖父さんが生きてる頃みたいに、車が生き生きしてたもの。久しぶりにお祖父さんの夢を見られそう」


お祖母ちゃんは、今でもお祖父ちゃんのことが好きなんだ。

お祖父ちゃんの形見の車だって、売らずにまだ遺してるぐらいだもんね。



……そっか。

そんな『好き』の形もあるんだね……。


「カノンは何があっても、アキに着いていきなさい。こっちの事は私とカイに任せて」

「うん」


お祖母ちゃんに返した私の笑顔は、今までお祖母ちゃんに見せた中でも、きっと一番だったはず。



ありがとう、お祖母ちゃん。


分かってくれて、本当にありがとう。