夕方、いつもの時間に大体の仕事を終えた私は、家に戻って夕食の準備をしていた。

今日はありあわせの食材で作ったパスタとサラダ。


蒼季は仕事が終わると、速攻でアルファロメオのところに飛んでいってた。


もう苦笑するしかないな。


やがて爆音を響かせる車エンジンの音がして、蒼季の帰りを教えてくれた。

「やー、やっぱ広い道跳ばして走んのは気持ちいいな!」


……帰宅したら第一声は「ただいま」でしょうよ、何考えてんの…。


諦めの溜め息を吐きつつ、蒼季にも夕食を勧めた。


「飯食ったらすぐ、サーキットに行くけど。いい?」


いい?って聞かれてもねぇ!


そんな柴犬みたいな、ワンコのような目で見上げてこられたんじゃ「嫌だ駄目だ」は言えないじゃん!


「いいよ。早く行きたいんでしょ?」

「あ、分かる?」


分かるよ、そりゃ!!

私だって、この1年ちゃんと蒼季のことを見てきたんだから。


こうなった蒼季が何を考えてるかぐらい、すっかり全部お見通しだよ。


「サーキットのコースを把握したくてさ」


そうそう、どうせそんなとこだろうと思ってました。



「……大丈夫なの?だって、日本の車とは運転の仕方が違うんでしょ?ハンドル逆だし」

「それは慣らしてきたから大丈夫。あーマジ興奮するー」


やれやれ。私がせっかく作ったご飯の味も分かってないな、これは。

急かすように食べる蒼季につられて、私も無理矢理パスタを胃に流し込んだ。


……まぁ、蒼季は私のためにイタリアに着いて来てくれたんだし。



今度は私が蒼季の夢に付き合わないとね!