朝からくたびれてる私とは違い、蒼季は朝からなんでか楽しそうだ。

鼻唄まで歌ってるしね。


そんなに今夜のバトルが楽しみなんですかね?車にリアルでハァハァする人の考えてることはよく分かんないですけど。


「本場のヨーロッパに行って、外車でラリーやんのは中学ん時からすげぇ憧れてたんだよ、俺」


私が変な目で見てたからか、蒼季が言い訳するように説明しだした。


「なんかさ、昔からの夢が叶うかも…って考えたら、興奮する。マジな話」


蒼季が少年みたいに目を輝かせて、まるで自分に言い聞かせるように嬉しそうに語っている。


車の話しだから私には全く何それ、って感じなんだけど、蒼季のこんな顔は初めて見た。


蒼季は私より年上だから(プラス数学教師でもあるから)、いつもは上から目線で蹂躙してくる事が多いけど、今の蒼季は、まるでお気に入りのおもちゃで遊ぶ、男の子みたいだ。



無邪気に笑うのを見るのも、付き合いだしてからは初めてだよ。



……こんな笑顔を見せられたんじゃ、いつもみたいに頭っからラリーのことを否定はできないじゃん。


しょーがないな。今日は特別に多目に見よう。




でも、きっちり昼間は働いてもらうけどね!