次の日からは朝早くからハードな仕事に忙殺された。


言葉が通じない蒼季も、寡黙に一生懸命手伝ってくれてるし。


たまたま泊まりに来てた日本人ツアー客のために、蒼季はコンダクターをやってくれていた。


その大半が若い女の人なのがあんまりいい気はしないけど。




「ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノはトスカーナ地方の郷土料理と合わせると、とても相性がいいんですよ。他にも貝類やイカやエビを使った料理や、軟らかいチーズ類などとも合いますね」

ツアー客にうちのワインの説明をする蒼季さん、笑顔が嘘臭いですよ?

大体の説明をファビオから聞いて、私がそれを蒼季に訳して教えたんだけど、堂々とそれをお客さんにガイドする姿はなかなかのもんだよね。



蒼季の説明を聞いていたツアー客の人は、ワインより料理より蒼季に目が釘付けになってるし。

しかもこの日本人のお客さん達、2日もうちに滞在するとか言い出すし。


蒼季も蒼季だよ、営業スマイルでお客さんを悩殺しないでくんない!?


それでもお客さんはお客さんだから、無理矢理私も笑顔で対応してたけど(他のお客さんには)。




そんなこんなで気がつけばもうイタリアに来て5日が過ぎていた。


その間、兄貴達の姿は全く見かけていないし何をやってるのかも分からない。


春臣や鷹嘴先生はワイナリーでたまに見かけたけど、特に話し込むこともなく手伝うこともされず。

めんどくさいからこの二人は放ったらかしといた。



……そう言えば、クリスの姿も最近は見かけないなぁ…。

どうしたのかな?