安藤先生を始めとして、両家が揃って座敷に移り、結納の儀が無事に終わったのは昼の1時過ぎだった。



これから両家で格式ある料亭に行って会食するみたい。



私は部外者だから、ここでお留守番……だと気楽に構えてたら。お母さんにさらりと言われた一言。



「華音ちゃんの席も、ちゃんと予約しておいたからね」



え。聞いてない。


訴えるような目で蒼季を見たけど、苦笑して「遠慮しないで着いて来いよ」って言われてしまった。けど。



本当に遠慮しなくていいの?お邪魔じゃないの?


何も言えずに、きゅっと蒼季のスーツの裾を握ったら、指を絡めてこられた。


そこからじんわりあったかい熱が全身に回って、ようやく安堵感が胸に広がる。



……蒼季の家族と一緒に行っても、良いんだね?


下から小首を傾げて蒼季を見上げた。


蒼季が私の顎を猫をあやすように擽って面白がって遊んでいる。




そして。



「親達も、もうお前の事を家族の一員だと認めたようだから。心配すんな」


そう耳元で囁いた。



ね、この先も蒼季と一緒の未来があるって、信じても良いって事なんだよね?






料亭ではそれはそれは贅を凝らした雅かなお料理がお膳に並べられて、さすがにこんなお上品なお料理をがっっついて食べるわけにもいかず、私も温和さんを見習って楚々として食べたんだけど。



……ああ、ラーメン食べたい。


なんて考えたのは胸の裡にしまっておこう。