「……ほわぁ……」


ショーケースの中には色も様々な上生菓子が並んでいて私を魅了して止まない。



練りきり鹿の子、きんとんに求肥。それから黄身餡。


中でも垂涎ものは、錦玉羹製の逸品だ。



透明な錦玉羹の中には、寒天で創られた涼しげに泳ぐ金魚や若葉が洗練された小豆と一緒に竹筒に閉じ込められて……。



これなら蒼季のご両親も喜んでくれるよね?


隣に鷹嘴先生がいることすら忘れて、私は上機嫌で竹筒に入ったその上生菓子を注文した。


てかこれ、味見のためにも2つぐらい買おうかな? 丁度ショーケースには2つしか残ってないし。よし、買っちゃえ。


店員さんを呼ぶつもりで口を開いたら、それより早く「同じの2つくれ」と言う低い声が。



鷹嘴先生に先越された!


ドヤ顔で私を見てくる辺り、絶対嫌がらせしてる!!


もー!どうしていつもこうなるの!?




「それ鷹嘴先生には似合わない。売って」

「何偉そうに言ってんだ。俺が金出したんだから俺のもんだ」



ねぇ、いつまでくっついて来んの?来なくていいよ!


3メートル離れて先に行く私の後を、鷹嘴先生はびったりくっついて着いてくる。



拷問だよこれじゃ。


「……離れて歩いて下さい。つーかあっち行け」


小声でぼそりと喋ったんだから聞こえなかったよね、今のは。




手土産のもう一つは、去年まだ蒼季と付き合う前に温和さんと蒼季と私と3人で行った、紅茶専門店の季節限定品にしようと決めた。


それで、今はそこに向かってるんだけど……。


後ろからビシバシ威圧感たっぷりに、鷹嘴先生が着いてくる。


……何だよ、また極悪3人組で酒のつまみにでもネタ探しでもしてんの?私と蒼季をダシにして。