桜空が死んでから、俺は死んでるように生きている。
前にもまして荒れて暴れた。世界は灰色なんかじゃない。白か黒しか存在しなくなった。
黒く闇に包まれたのは、俺。その周りを覆うのは、手が届かない真っ白くお綺麗な他人ばかりだった。
世界に意味が無くなった。俺がこの世に存在して良い訳もなくなっちまった。
桜空との出逢いが俺を変えたというのなら、桜空の死もまた、俺を変えた。
こんなに深い喪失感を今までに味わったことはない。誰かを亡くして悲しみに満ちた世界に閉じ込められても、それから這い出る術を俺は知らない。
時折、春臣が痛々しげにそんな俺を眺めている。だけど春臣は何も言わない。
一度だけ、岩さんが溜まり場にやってきて俺を見てポツリと言った。
「…お前また、沈んじまったんだな…」
岩さんの目は、悲しそうな目をしていた。
何だってあんたが悲しむんだよ。悲しいのは俺で、あんたじゃないだろ。もう放っておいてくれよ。
誰も彼も、俺に構わないでくれ。