その夜に俺と桜空が行ったのは、誰にも邪魔することのできない神聖な儀式のようだった。
快楽を求めるのではなく、愛する者との間にこそ行われるべき穢されることのない、純粋な行動。
全てが終わった時、裸の桜空は聖母のように神々しく微笑んでいた。
俺は一生あの笑顔を忘れない。
そしてその夜の結果、桜空は妊娠した。
だが投薬や抗癌治療の副作用のせいで、赤ん坊ははすぐに流産してしまう。
それでも俺達お互いが生きていれば…と、願い続けた俺の祈りも虚しく、桜空の最期の時はやってきた。
結果としてあの妊娠が桜空の寿命を縮めたんだ。
俺は桜空の両親に責められる覚悟をして頭を下げた。
だが、日本人が嫌いなはずの桜空の母親は俺を責めてはくれなかった。
父親も同じ。
なんで…何でだよ!?
俺が桜空の死期を早めたようなもんじゃないか。頼むから責めてくれよ…!