俺達の願いも虚しく桜空の命は一日一日削られていくのが分かる。


桜空の母親は、気が狂わんばかりに泣き伏した。


父親は、あくまで冷静さを保ってはいたが、病院の喫煙所で声を押し殺して泣いていた。



それでも桜空は、悲観してはいなかった。


いや、俺が桜空に悲観するような暗い未来を見せたくなくて、毎日病室に通っては自分の携帯に納めた日々移り変わる景色を見せてやっている。



だからなのか、宣告された当初とは違い今は落ち着いた精神状態で俺が来ると笑顔すら見せる桜空。



それは出逢った頃のような屈託のない笑みではないけれど、それでも懸命に生きようとする桜空の美しい姿がそこにある。




それだけで、いいんだよ。




お前は俺の傍で、ただ笑ってくれていればそれでいいんだ。






やがて人肌恋しい秋風が吹く頃、桜空がポツンと俺に語りかけた。



「先週から私のネ、白血球が少し増えてきたんだっテ。先生がネ、『生きる希望ガ病気を治す事モありますヨ』って言うノ」

「…そうだろ。お前は俺と一緒に生きてくんだろ?」


生きる希望が桜空を治してくれるなら、俺がお前を死なせねぇ。