ホントにホントに、中西尾は黙っていた。いつもと全然違う。気を遣っているのだろう。
「やっぱ、変えてくださいって言おうか?」
4時間目、しゃべりやすい理科の時間。
「え、でも…」
中西尾が先生に、なんて言うかもなんて言われるかもわからなかった。
「大げさかもしれないけどさ。俺、人が泣くのを見るの、嫌いなんだよね……」
中西尾は、恥ずかしそうにそっぽを向きながら言った。それも私にしか聞こえない声で。
…何か過去に、あったのかな。
ねぇ、人が泣くのを見るのが嫌いなんて。教えてくれたの、もしかして私だけ?
「子供っぽいだろ」
泣きそうになった。でも嬉しかった。
うん、大げさだ……。
わたしはつぶやく様に思った。
でも、本当に嬉しくて嬉しくて、口を抑えながら黙るコトしかできなかった。
そして、忘れられない言葉となった。