「 短期的な障害か、長期的な障害なのかはまだ分からないんだって」


陸斗のお母さんがそう言った。


「………もしかしたら、後遺症に悩まされるかも知れないから……。だから、睦月ちゃん」

「でも、あたしは『陸斗の彼女』だから」


言いにくそうに言葉を濁す、陸斗のお母さんに向かってあたしは言い切った。


陸斗のお母さんは、あたしのことを考えてくれたんだろう。



だけど。



「陸斗を『支えたい』なんて考えてないです。あたしが陸斗と、一緒にいたいんです。それじゃダメですか?」



陸斗のお母さんは、あたしに頭を下げて小さな声で「ありがとう」と呟いた。



「睦月ちゃんは何日も寝ないでアンタが目を覚ますのを待ってたんだよ?今日はもう、帰してあげようね?」



陸斗のお母さんは、優しく陸斗に声をかけた。


「マジで !? 家には帰ってねーの !?」



そんなに驚いた顔しないでよ。


帰れるわけ、ないでしょ。



「ろくにご飯も食べてないの。だから、ね」

「あ、ああ。悪かった。けど、明日もまた……」


「うん。朝一番に陸斗に逢いにくるね」


陸斗は笑顔で何度も手を振った。


それに応えてから、あたしは治療室を後にした。